前回の記事でお話しした通り、深夜0時ダニーデン発のバスに乗り、朝3時にインバーカーギルへ到着するという強行スケジュールの旅。今回はその詳細をお届けします。
世界の最南端:ニュージーランド人にも敬遠される街

ニュージーランド南島の最南端に位置するインバーカーギル(Invercargill)。地元では通称”世界のケ○の穴”とも呼ばれています(笑)。人口は約57,000人ほどの小さな都市ですが、街を歩くと歴史的な建築物が多く、どこかヨーロッパの落ち着いた地方都市のような雰囲気が漂っています。
ニュージーランド人でさえ敬遠するこの街、かなり保守的な気風で知られているそうです。小さな田舎町ゆえ、よそ者が来るとすぐに分かる、とも言われています。ましてや見た目からして明らかにアジア人の私が行ったら、それは目立つわけです。全体を通せばそこまで酷い目に遭ったわけではないのですが……お気に入りのチェーン店「Hell Pizza」に入ったとき、事件が起きます。その話は後ほど。
市中心部に伸びるクラシックなストリート

写真に写る大きなモニュメントのある通り(Esk Street周辺)は、インバーカーギルの中心部です。石造りのクラシックな建物が連なり、カフェ、ショップ、レストランが並ぶ、歩いていて心地よいストリートです。派手さはないけれど、落ち着いた風格のある街並みで、思っていたよりずっと絵になる場所でした。

街の中心に立つ時計塔モニュメント

街の中心部にそびえる時計塔モニュメントは、インバーカーギルの象徴ともいえるスポット。四方に腕を伸ばしたような台座の上に像が立ち、周囲にはクラシックな建物がぐるりと並ぶ印象的なエリアです。歴史と現代が静かに交差するような空間で、街の規模の小ささとは不釣り合いなほどの存在感がありました。
“生きた化石”トゥアタラに会える街

トゥアタラ(Tuatara)とは、ニュージーランド固有の爬虫類で、恐竜時代からほぼ姿を変えずに生き延びてきた「生きた化石」です。街のあちこちにトゥアタラをモチーフにした彫刻や装飾が施されており、インバーカーギルのシンボル的な存在となっています。

実際のトゥアタラにも対面してきました。淡いグレーの体にゴツゴツとした背中の稜線。動きはゆっくりですが、その古代的な佇まいにはどこか神秘的なものを感じます。街には等身大を超える巨大な石像も設置されていて、訪れた人が記念写真を撮る定番スポットになっていました。静かな街の空気と相まって、時間が止まったような不思議な感覚に包まれます。
世界最南端のスターバックスでひと休み

来たかった場所のひとつが、ここ——世界最南端のスターバックスです。見た目は世界中どこにでもあるスタバと何ら変わりありませんが、地球上に存在するスターバックスの中で最も南に位置する店舗がここだそう。店内には、Stirling Pointの道標を模したユニークなサインポールが立っていて、世界各都市までの距離が書かれています。「Dunedin 156 km」「Seattle 12,404 km」——1号店からこれほど離れた場所にも、スターバックスはちゃんと存在感を放っているのですね。



歴史的建造物









空飛ぶピザ——生まれて初めて受けた、あからさまな差別
15年ほど海外生活や旅行を続けてきて感じることですが、残念ながら差別は世界のどこにでも存在します。多民族国家であるアメリカ(西海岸)やカナダではあまり経験しませんでしたが、ヨーロッパではそれなりに感じる場面がありました。日本でも外国人が同様の扱いを受けることがある、というのは想像に難くありません。どの国であれ、マイノリティはそういった局面に直面しやすいのが現実です。
さて、例のHell Pizzaへ入ったときの話です。レジにいたのは若い女性の店員。私の前のお客さんは地元の方で、その店員は満面の笑みでとても丁寧な対応をしていました。感じの良い人だな、と思いながら私の番が来た瞬間、その笑顔がスッと消え、無言になりました。まるで何かに怒っているかのような表情です。注文を終えると、値段だけを告げられました。
先に頼んでいたお客さんのピザが焼き上がると、店員は最高の笑顔でそちらのテーブルへ。”Here’s your pizza! Thanks so much — hope you enjoy and have a great day! See ya!” といった感じの、まるでお手本のようなサービス。では、私のピザはどう届けられるのだろうと緊張しながら待っていると——後ろからピザの箱がテーブルにドサッと投げ捨てられ、一言もなくその場を去っていきました。
生まれて初めて、海外でこれほどあからさまな差別を経験した瞬間でした。今の時代でもここまで露骨なことが起きるのか、と当時は困惑するほどでした。私が怒らせるようなことをした覚えはまったくないのですが、よそ者の、しかも外国人の私がその場にいること自体が癇に障ったのかもしれません。あの光景は、今でも鮮明に覚えています。
大好きなHell Pizzaだったにもかかわらず、動揺してしまってとにかくさっさと食べてその場を後にしました。それ以上の差別体験は、その後15年間一度も経験していません。
今思い返すと、客にピザを投げられる精神力って逆に凄いな、とさえ思います。完全に笑い話です。
まとめ:意外と見どころの多い街

写真を見返してみると、インバーカーギルは意外と見るべき場所が多い街です。歴史的な建築物、世界最南端のスタバ、そして生きた化石トゥアタラ。なかなかどうして、侮れません。
私はあからさまな差別を経験しましたが、インバーカーギルの人すべてがそういうわけではありません。実際、親切な方々にも多く出会いました。あのとき感じた怒りよりも、深い悲しみの方が大きかったけれど、あの経験が自分を少し強くしてくれたと今では思います。南島の旅に少し余裕があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。次回は今回の旅のメイン目的地、Bluffをご紹介します!


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